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2017年9月

2017年9月 5日 (火)

悲しんでいては前に進めん。

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今年も恒例事業である兵庫県山岳連盟主催のクライミング講習会が7月11日より始まり、4回のピラミッドウォールでの講習を経て8月27日(日)六甲保塁岩での外岩講習の日を迎えた。今年の受講生は19名でした。そして今日の外岩講習には13名の方々が参加されています。スタッフを入れると20名の大部隊となりました。

昨日は芳之君の葬儀告別式やったし、その帰りにサークルHMAの運営会議に顔を出してから自宅に戻りましたが気が抜けてしまって何もする気が起きませんでした。しかし、この講習会は私も参画している仕事?ですから気持ちを切り替えて六甲山への向いました。悲しんで落ち込んでる姿を芳之君が見たら「何してんねん」と怒るでしょう。

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真夏の炎天下でのクライミングは厳しいものがあります。ここ保塁岩は六甲山上と云う立地からその点では比較的涼しくてこの時期は多くのクライマーが訪れます。我々総勢20名がルートを講習会の為に独占する事は許されません。それが気掛かりだったのですが幸いなことに知り合いのパーティーが大半で快くルートを空けて頂き協力してくれたのです。有難う御座いました。

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「電光クラック」「中央クラック」をデモクライミングする西村、大谷の講師陣です。

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講師達の動きを熱心に眺める講習生の面々です。この後、全員が果敢に壁に挑んで行きます。2ルートは厳しいルート設定なんですが皆さん頑張っていました。朝9時に始まった講習会は夕方4時まで続いたのです。

今年も無事にクライミング講習会を終える事が出来ました。やれやれホッとしました。

「お疲れ様でした。来週はセルフレスキュー講習会です。 忙しいね」

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先週はクライミング講習会の最終日でした。9月3日(日)は技術遭難対策委員会によるセルフレスキュー講習会が神戸登山研修所で開催されました。サークルHMAから参加した6名は岩場での事故を想定した救助技術を真剣な眼差しで受講しています。

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リードしていたパートナーが墜落した。確保はしたものの負傷して身動きが取れない。ビレヤーは握るロープに荷重が掛かって手を離す事も出来ない危機的状況となった。ここからビレイヤーが要救助者の元に向うため負荷を外す自己脱出操作を行う一連の作業がビシビシと教え込まれます。

「こんな事も出来へんのか!何処のクラブや!サークルHMA?代表は誰やねん?」

本日の講師陣は厳しいですね。一本松遭対委員長、西村指導委員長、市川遭対委員が指導にあたっております。市川講師が本日の要救助者役です。説明が続いている長い間もブラ下がったままですから疲れるでしょうね。

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今年度から兵庫県山岳連盟の理事に就任した市川君は技術遭対委員として多くの事業を手掛けています。9月9日(土)にはサークルHMAのメンバーを対象にした読図基礎講座の講師もお願いしております。

「兵岳連も大谷、市川達の次世代メンバーが背負ってくれるでしょう。老兵が消え去る日も近いね」

2017年9月 1日 (金)

前田芳之君を偲ぶ

長年の友であり自然界との接し方を教えてくれた師でもあった前田芳之君が逝った。行年71歳でした。過ぎし日、彼と共に奄美の自然に触れた、その思い出を記して芳之君を偲びたいと思う。

彼ほど豪放磊落な男に出会った事がなかった。芳之君と話していると自分自身がチッポケな人間に思えてしまう。

大阪出身の彼は若くして生活拠点を鹿児島県の奄美大島に移し「芳華園」と云う農園を構え奄美の大自然と向き合った。 

私とは同じ山男でもあり妙に気が合い同年代と云う事で「クロちゃん、ヨシユキ君」と呼び合うようになった。芳之君との付き合いも考えれば何十年にもなる。芳之君は子供の頃は昆虫少年、大学は理学部に進み理学博士でもある。甲虫の研究者として、また樹木医としても名声は高く、その足跡は遠く南米パラグアイにまで及んでいる。パラグアイのジャングルには毎年のように出掛けては甲虫や植物の新種を探していた。

帰国すると、 

「クロちゃん、またやられたわ!」

腕の皮膚に卵を産み付けられて皮下で幼虫が孵りモゾモゾと動きます。

「またナイフでほじくって取り出すわ」

何度か一緒にパラグアイへ行こうと誘われましたが話を聞いただけでお断りしましたね。

「クロちゃん、アスンシオンの女の子はスタイル抜群で綺麗やでえ!」

私の心が少し揺らぎました。

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芳之君の自然科学に対する知識と動植物に注ぐ愛情は並外れていました。鹿児島県の自然保護委員で環境省希少野生動物種保存推進委員でもある彼を師と仰ぐファンも多く居るのです。鹿児島大学や九州大学とも協同研究をしていたようです。頭デッカチで学究肌のガチガチの学者とは程遠い酒とパイプ煙草を愛する何処にでも居そうな田舎のオッチャンでしたね。 

私が環境省の自然公園指導員になった時も

「クロちゃん、これからは動植物の勉強もシッカリとやれよ」

尻を叩かれました。

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奄美大島の瀬戸内町に彼の農園はある。蘇鉄や南洋植物を栽培しており、その多くは海外に輸出されています。

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何年も前に訪れた奄美本島の南にある加計呂麻島の海岸です。芳之君と二人で断崖に自生する蘇鉄の古木調査に出掛けたのです。

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この時、神戸から登攀道具をゴッソリと持参して調査に向いました。海岸線から壁を登って行くのですが岩が脆くて危険なクライミングでした。それに奄美の夏は半端な暑さじゃありません。お互いクライマーですから結局はこの壁を登り調査は完了させました。

「加計呂麻島と徳之島の間に海上にそそり立つ岩峰があるねん、そのテッペンにも大きな蘇鉄が自生してるんや、船から取り付いて登ろうや」

この計画は実現せずそのままです。

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金作原という奄美の原生林へ入りました。沖縄本島で絶滅した「リュウキュウ鮎」が奄美に多く生息しているというのです。天然記念物の絶滅危惧種「黒ウサギ」の形跡も探してます。これも沖縄北部にしか生息しない天然記念物である日本最大の甲虫「ヤンバルテナガコガネ」も奄美で確認したと言うのです。本当に奄美は手付かずの自然が残るパラダイスでした。

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原生林はジュラシックパークの世界です。巨大なシダ(ヒカゲへゴ)が生茂っています。今にも恐竜が出てきそうな雰囲気でした。

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「リュウキュウ鮎」が群れている清流です。私の知る内地の鮎よりかなり小型で言われなければ鮎と云うよりハエにしか思えませんでした。今では奄美の「リュウキュウ鮎」は沖縄本島の河川に放流され、その個体数も増加傾向にあると聞いた。

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これは金作原の帰りに捕獲したハブです。こいつは本当に大きい奴でした。

芳之君と私の間に飛び出したんです。私が棒切れで押さえ芳之君が手際良く袋に入れます。凄い力で抵抗しましたね。

「噛まれたらどうしよう?」

「大丈夫や、噛まれたらポイズンリムーバーがあるから傷口を剃刀で切ってから毒を吸い出したる!」

何とも凄い話です。

このハブ君は古仁屋にある東京大学医科学研究所(奄美病害動物研究施設)の服部先生に渡しました。蛇毒血清に役立ててもらいましょう。

ハブは鼻の先端にあるセンサーで熱を感知して攻撃するそうです。服部先生が捕獲棒の先端を軽くライターで焙り、ハブの鼻先に近づけると熱に反応して飛び掛かりました。

「きっと、こいつは芳之君が咥えてたパイプの熱に反応して飛び出したんやわ」

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奄美本島と加計呂麻島間には大島海峡があります。入り組んだリアス式海岸と珊瑚礁が広がっています。山から戻り今度はダイビングです。色とりどりの珊瑚、熱帯魚、大きなシャコ貝、夜光貝、奄美の海も素晴らしい。芳之君はこの海で巨大なクエを餌付けしてると言う、人馴れして寄ってくるそうだ。

困るのは海蛇の多さです。人を恐れず直進して来るのでこちらが避けてやるんです。

「クロちゃん、そいつの毒はコブラより強いぞ!」

芳之君は笑いながら脅かすのです。

確かに猛毒ですが口も小さく、刺激しない限りは大丈夫。

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この海の透明度の高さには驚きました。体が空中に浮かんでいるような不思議な浮遊感には感動しますね。

芳之君と過ごした奄美での数日を私は生涯忘れることはないだろう。

彼と一緒に行こうと約束していた東シナ海の人口浮き漁礁での磯マグロ釣り、南アフリカに広大な農場を所有する農場主に誘われたバッファローを狩るビッグハンティングもあったよな。俺を残して自分だけ夢の世界へ旅立ってしまいましたね。本当に寂しいです。悔しいです。

まだまだ教えて欲しい事が山ほど有ったのに、私の人生観に大きな影響を与えた芳之君、自分自身が納得出来る生き様、何を求めるのか、何を目指すのか、彼に背中を押され、励まされ、私なりに進む方向を見い出してきた。

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今富君とこの夏には奄美へ行って黒糖酒を酌み交わそうと約束していたのに、それも叶わず芳之君は旅立ってしまった。

芳之君の残した功績は本当に大きい。奄美の動植物を守り、そして育て、自然と人間はどう共存するべきかを提議してきたね。

弔文で述べられていた、

「奄美の動植物に代わって代筆します。私達は貴男に感謝しています。私達を守ってくれて本当に有難う」

心に滲みました。

芳之君、君の人生は最高でしたよ。自らが目指した道を歩き通した、納得の一生です。そう思いたい。

「さようなら、我が友、お疲れ様でした、私も感謝しています」

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