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2015年6月

2015年6月30日 (火)

私、クラブ雲峰の看板娘で~す!

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クラブ雲峰の看板アイドル犬の「ワサビ」ちゃんです。

間もなく3歳を迎える黒ラブのお嬢ちゃんなんですよ。

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パピーの頃から知っていましたが、暫く会わなかったのにしっかり覚えてくれていました。山に来れば犬好きメンバーの間を愛想を振りまいて走り回っています。

「クラブ雲峰準会員にしてあげようか?」

「ワン!オヤツくれますか?」

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6月最後のトレーニングには16名が参加しています。今回も賑やかに始まりました。

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中ノ壁中央のビレイ点では渋滞してます。「クラブ雲峰様御一行」ですわ。

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「ムッチャ、恐かったわ~」

「嘘ぬかせ!」

心にも無いくせに、可愛い事を言うナオミちゃん。

手前は右腕の腱を痛めていると聞いていましたが、元気なナベちゃんです。

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足首の捻挫から数ヶ月、長い我慢を経て復帰してきた楠兄です。

「今日は特にハイテンションやのう、無理したらまた故障者リスト入りやぞ!」

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午前中は時折り雨雲が通過してパラパラしたお天気も午後には好天となり絶好のクライミング日和となりました。

「なぁ、天気が良うなったやろ、俺が来てるからや」

今回も高ちゃんは仰っています。

愛用のスポルティバカタナをリソールしたら両底がボコボコに波打って帰ってきました。クレームでやり直しさせましたが左の底部が直っていません。テストで履いてみましたが違和感が残っています。

「好日山荘さん、ホンマ頼むで!貴重な愛用シューズなんやからな!」 

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綺麗な夕陽が出てます。よし、気分転換の釣りに出掛けよう。生後8ヶ月で離乳食を食べだした孫娘のオカズ採りです。

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さすがに須磨一文字は魚影が濃いですわ。ネズさんが毎回用意する台紙に乗せたらサイズも20~25cmの良型ガシラ、メバルが出てます。先客の地元釣師が60cm級スズキを数本揚げていました。私にはそんな大物は不用です。メバルとガシラが有れば満足なんです。勿論、釣れればそれに越したことはありませんけどね。

「大物が来るで!タマを用意しててよ」

ネズさんは狙ってたようですよ。

この釣果で餌代は一人400円位なんですから止められませんよね。防波堤に波で打ち上げられてた鰯も良い餌となります。

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本日、一番の大物ガシラを揚げたご満悦のシミズさん、

「いつもボートを使わせて頂き有難う御座います」

2015年6月24日 (水)

パウデル氏が来神しました。

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古くから付き合いのあるネパールのGHANASHYAM PAUDEL氏が来日した。多忙な日程を割いて来神され我々との懇親会に出席してくれました。

彼はカトマンズでエクスペディションやトレッキングをコーディネイトする事務所を開いており高ちゃん達もダウラギリを目指した遠征や偵察でもお世話になっています。

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今年4月に発生した大地震でネパール各地に壊滅的な被害が出ていると報じられている。懇親会の席でパウデル氏から今現在のネパールの現状、復旧の進捗度などを直接お聞きすることが出来た。特にアベ先輩は一年間を医療施設整備のためカトマンズで過ごされた事があり、友人も多く居ます。震災後は消息も定かに無い状況が続いており、真剣な眼差しで氏の話を聞いておられました。

来年、再来年と遠征計画を練っている登山家は多い。果たしてネパールヒマラヤに行けるのか受け入れてもらえるのか率直な質問をぶつけてみた。

「all right no problem 大丈夫です。来てください、待ってます」 

だそうですよ。

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長い登山人生の最後となるであろうヒマラヤ遠征を真剣に考えて進んで行こう、クラブ雲峰○○峰登山隊、考えただけでワクワクしてくる。

MR,PAUDEL、またお会いしましょう。

ネパールの一日も早い復旧を心より祈っております。

2015年6月22日 (月)

梅雨の合間にトレーニングしよう

6月21日(日)早朝には雷が聞こえ強い雨が降った。しかし家を出る頃には雲の切れ間から青空が見えている。これなら今日は雨具のお世話にならなくて済むだろう。本当は雨の中を歩きたかったんです。撥水力の落ちたレインウェアーをメンテナンスしたのです。

Dscn4747GRANGER'Sの洗剤と撥水剤のセットを購入しました。まずはウェアーの汚れを落としますが家庭用の洗剤では素材に施されている耐久撥水機能を損なう事があります。セットの専用洗剤を使い洗濯機での作業を進め、次に撥水剤に浸し手絞りします。そして陰干し後の最終仕上げは乾燥機です。熱を加える事で撥水剤が定着し新品同様の撥水機能を取り戻していました。

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夏山に向けてのトレーニング第3弾は天狗道を登り地蔵谷を経由してMロックでのクライミングです。新神戸と修法ヶ原の2方向から10名とワサビも参加です。

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雨の気配は去っても湿度が高く無風と歩荷訓練には最悪の条件です。背負ったザックには登攀用具一式とザイルや雨具、ファーストエイド等がビッシリ詰まっており本番を想定した重量となっています。この状況が脱水症の危険度を上げます。汗は蒸発せず、体温が下がりません。何度も水分補給を行って行動しました。さすがの四足歩行で登るワサビもハアハアと息が上がっておりました。

「ワサビ、頑張れ!おやつにバナナチップやるで!」

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来月に登る事にしている地蔵谷の滝を偵察して下り、Mロックに到着です。先行していたメンバーも加わり13名が集合です。

岩はビッショリと濡れており滑りまくりでクライミングになりません。マアちゃん講師からダイアゴナルやフラッキングの講習を受ける面々は真剣な眼差しで聞いています。

「聞いて、見てたら理解は出来るけど、イザ自分が登ってみると出来へん!」

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Mロックの南面は他のルートに比して乾いています。階段を裏側から登る感じのハングした壁です。

「滑る!滑る!ヤバいでぇ、蜂の巣まであるよ、目があったら睨んどる」

私は所用がありお先にMロックを離れましたが残った面々は濡れた壁との格闘を続けておりました。

「ワサビ、また遊ぼうなバイバイ!」

甘えて悲しそうな鳴き声を背に帰途に付きましたが、声は谷に響いておりました。

ナオミちゃんにまた怒鳴られるぞ、

「煩い、ワサビ!何を鳴いてんねん!」

2015年6月15日 (月)

凄い事になった妙号岩

6月14日(日)は夏山に向けてのトレーニング第二弾で妙号岩です。

BBSでの掲示と一斉メールで発信、すると集まって来ましたよ~!

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帰り道で撮った集合写真には19名が、途中で下山した6名を含めると驚くなかれ25名が妙号岩に集まったんです。  

クラブ雲峰の長い歴史の中でトレーニング山行にこんな人数が集まった記憶が私には有りません。凄い事になっています

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「そうそう、忘れるところやったね、君も参加者やなぁ」

ワサビちゃん、2歳の黒ラブのお嬢ちゃんです。犬好きの幡ちゃんや髙ちゃんになついてました。

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前ノ壁、中ノ壁にルートとメンバーを分散してクライミング講習の開始です。

テラスにはとても全員が上がれない状況なんです。

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天気予報は目まぐるしく変わりました。雨から時々雨に、結果は曇り空で推移し暑くもなく絶好のクライミングコンディションでしたね。

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参加メンバー個々が自らの課題に挑んでいます。知識と技術をどんどんと吸収していく姿を頼もしく眺めていました。

大勢が集まり登るのでビレイヤーに専念したりルートセッティングしたりと指導担当者(運営担当)にはご苦労をお掛けしました。自分が登って楽しみたいやろうに我慢してくれて、有難う御座いました。

「これだけの人数が集まって貸切りで練習が出来る妙号岩は有り難いね」

本当に感謝です。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・・・・

2015年6月 8日 (月)

G4とY1で歩け、歩け!

土曜日は妙号岩で新たにメンバーに加わった亀ちゃん、ナオミちゃん、ケンちゃん、Y君、入会考慮中の姫ちゃん、市ッちゃん、トっちゃん、私と賑やかでした。

「久振りに見たけどナオミちゃんもケンちゃんもクライミングは上手くなってるやんか!」

嬉しかったのは2歳になった黒ラブのワサビちゃんと会えたこと、ラブラドールは本当に可愛いですわ。

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6月7日(日)09:00、阪急芦屋川に集まったのはG4(爺さん4人組)とY1(若手1名)です。駅前は多くの登山者で溢れています。登山ブームなんだなぁと改めて実感する風景です。今日は耐久歩荷訓練と銘打ったトレーニングだ、ザックの重量は10kg超と指示が出されていて、芦屋川から三ノ宮まで歩くんだそうです。暑さを考慮して水とスポーツドリンクを4リットル担ぎました。

「このクソ暑い時期にキツい設定やのう!倒れるわ」

我々は混雑する中央稜を外れ地獄谷を登り風吹岩に抜けました。

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雨ヶ峠からは東おたふく山へルートを変えます。今までの雑踏のような登山道を離れて静かな笹原を歩きます。昔は一面のススキ原だった東おたふく山ですが笹の繁茂でススキは姿を消しています。近年になりススキ再生プロジェクトが進められでおります。このプロジェクトも気が遠くなるような時間が必要なんですよ。

「昔見た、あの銀色に波打つススキ原を俺達は再び眼にする事は無いね」

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東おたふく山から土樋割峠に下り、七曲りへと向います。当初は蛇谷山から石宝殿に抜ける予定でした。

「素直に七曲りにしようや、楽に行こう、楽にね」

再び、多くの登山者に追われるように七曲りを上がった。

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七曲りを前後しながら登った山ガールと山ボーイに一軒茶屋で話掛けられた。

以前グラビティーで逢ってトっちゃんに指導してもらったことがあると彼女達が話す、

「ほう、トっちゃんマメですなぁ、ネズ師匠と良い勝負やで!」

ここで登場が高ちゃん、ザックから何と冷凍した甘夏ミカンの缶詰が8個も出てきました。これだけでも相当な重量ですわ。

この芸当は高ちゃんにしか出来ません。恐れ入る体力です。虚弱体質の私にはとても出来ません。

彼女達にもお裾分け、大歓声を上げておりました。

そして、

「記念に写真を撮っていいですかぁ~」

フランスパンマエダ改めドンクマエダに対抗してアマナツタカギではどうでしょうか?

有馬へと下る彼女達と別れ我々は後半戦の道程を西へ西へと黙々?と歩いたのです。

「今日は下山したらO君の歓迎会をしたる!」

「だた名目付けて呑みたいだけの事でしょうが」

O君は、帰りの電車で心地良い眠りに落ちてました、

「オイ!駅に着いたぞ、早よ起きんかいな!」

2015年6月 6日 (土)

後山(板馬見山)でスズコ採り

久し振りにスズコ採りに行こうと思った。

スズコとは根曲り竹(チシマザサ)の竹の子なのです、5月末から6月にかけての時期に旬を迎えます。

スズコはアクの無い美味しい人気の山菜ですから、この時期には多くの人がスズコ採りに山へと入ります。氷ノ山の大段平付近は休日ともなれば車が溢れる程の盛況なのです。

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我々はフィールドを後山と定めました。ここは岡山県と県境を接する山で登山ルートは兵庫県側の板馬見渓谷から入山するとしたのです。

この山は修験道行場で西の大峯山とも言われています。兵庫県側での呼び名は板馬見山。

「氷ノ山より山も険しいし人山者は少ないし大丈夫や、きっと採れるって・・・」

そうなんです。今日の参加者は三ノ宮でフレンチレストランのオーナーシェフをしているY君とシェフ見習い修行中のジュンちゃんです。今日は彼達の食材集めの意味合いもあって、文ちゃんと私が案内する事になったんです。タカ子ちゃんも参加予定でしたが参加出来なくなったんです。あんなに行きたいと言ってたのにね。もう一人イタリアンのオーナシェフをしてる荻ちゃんもイタリア領事館のレセプションに招待されていて不参加です。彼の分を収穫して届けたナオヒデ君からスズコを使ったイタリアンは最高やったと、写真添付で特にリゾットは美味かったと腹の立つ報告が後日、送られて来た。

「そら君だけ食ってエエよなぁ」

私はバター炒めに、それとシンプルにワサビ醤油で、それなりに美味かったけどね。

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驚きましたァ、不動滝には真新しい木道が設置され、登山道の整備が進んでいました。

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登山道は山頂まで一般コースと行者コースの2本があります。

我々は迷わず行場を巡る行者コースを選択しました。以前は腐って変色したフィックスだけでしたが、新たにロープがセットされています。

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ここも行場の一つです。

「懺悔、懺悔、六根清浄」

身も心も清めてスズコポイントへと登って行きます。

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「ジュンちゃん、ほら、見てごらん、あそこにあるやろ、早よ採り!」

根曲り竹の群生地に突入です。しかし、予想以上に採られていて前回に来た時より見つけるのが難しい状況でした。

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それでもスズコを見つけるコツやポイントを教えてあげると、それなりの収穫は上がります。

「一本見つけると周辺にもありますわ!」

Y君、ジュンちゃんのシェフコンビは夢中になって嬉々として藪に突っ込んで行きます。

「あまり深く入ると出られんようになるよ、回りを確認して急斜面には行かないようにね」

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山頂で収穫したスズコを手にしてご満悦の面々です。

これがフレンチシェフの手で如何なる料理に変貌するのやら?

来月には故郷の金沢に戻るジュンちゃんには良い思い出となったでしょう。

彼女の夢は地元金沢でフレンチのお店を持つ事だそうです。

女性フレンチシェフの誕生を我々も楽しみにしていますね。

山での収穫を終えたら今度は海です。

 

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この日の釣果にネズ師匠はいたく不満足です。

「リベンジしたるぞ!」

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そして数日後、再度のチャレンジです。

「どうや!今度はエエ形が釣れてるやろが!」

「あんたの粘りにはとても勝てませんわ!」

2015年6月 1日 (月)

これからは君達の時代だ!(私達は見守って行きますね)

        2015年5月31日(日)神戸登山研修所

        09:00~17:00まで。

クラブ雲峰50年の歴史で初めてとなる新入会員及び入会を考えている方を対象としたオリエンテーションを開催しました。

「俺達や後輩もこんな丁寧なオリエンテーションなんか受けた記憶が無いもんね」

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これからのクラブ雲峰を支える運営委員を含め24名が集まってきました。ナオヒデ代表、副代表の私、技術委員長のトっちゃんからクラブ雲峰の主旨、活動内容、将来に向けてのビジョンと、こと細かな説明が行われました。

出席者全員の自己紹介と登山に関する考えが述べられました。山岳会とは堅苦しく敷居の高い特殊な組織であると思われている人が多いとも感じたし、山に対して語られる言葉には熱い思いが込められており、入会される方々に対する大きな責任を実感したのです。

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今日は雨の予報が出ていて心配したのですが、予報と相反し良い天気で拍子抜けです。午前にミーティングを行い、午後に実技を行なうとしていたのですが、予定を変更して涼しい午前に実技を先行させる事にしました。ピラミッドウォールを使ってのビレイ練習、これは実際に10m程上でリードクライマーが墜落して、それをビレヤーがシッカリと止めるのです。一つ間違えたら大怪我ものですから神経を張り詰めた緊張感漂う実技です。墜ち役名人のナオキ君とナベちゃんが頑張ってくれました。

「俺が墜ちたらビレイヤーの体が宙に浮くでぇ」

そしてマルチピッチのシステムチェックや懸垂下降を反復して行ったのです。

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ここに写ってる全員がクラブ雲峰オリエンテーションに集まったメンバーです。市っちゃんが言ってます。

「この人数を見てビックリしましたわ!雲峰は消えて無くなるんかと一時は心配しましたもんね」

我々の運営方針や将来を見据えた活動が理解してもらえず雲峰を去って行ったメンバーもいます。私達はこう考えます、どんな企業であってもクラブ雲峰のような小さな山岳会組織であっても重要な事は人材の育成であり目標を定めた長期計画です。特に人材育成には全力を傾注し時間と労力を惜しまず掛けるのです。そうして次世代を担う後輩を育て、雲峰の魂を伝え、そして50年の伝統を受け継ぎ新たな歴史を重ねて行ってもらおうと思っているのです。

後輩達へ一言、私達も間もなくOBとなります。これからは若いメンバーにクラブ雲峰を委ねます。そしてこれから我々は君達を見守って行きたいと思っています。俺達が居なくなっても共に登り、共に語り、共に過ごした事を忘れずクラブ雲峰をより良い方向へと導いて下さいね。今日は楽しく嬉しい一日でした、有難う御座いました。

50年や見守りやと書いていてフッと思い出したんです。今年がお袋の50回忌だと、そしてファイルを繰ってみたらナオヒデ君が理事を務める癌と闘う患者さんやご遺族をサポートする「日本がん楽会」の機関誌に依頼され投稿した5年前の原文が出てきたんです。

  

 

                     お母ちゃんありがとう

                             黒 田 信 男

日本がん楽会第二回美術展のご案内を佐藤直英さんから頂きました。私は恥ずかしながら、このサークルの存在やその趣旨すら知らず、ましてや佐藤さんが会の一員である事も初めて知ったのでした。

彼は私が所属する山岳会の先輩です。昨年の8月に最愛の奥さんを亡くされています。その長きにわたる献身的な自宅での看護介護の日々を我々仲間は、ただ、そっと見守る事しか出来なかった。 

彼の姿を見ていて「私のお母ちゃん」を思い出したのです。お母ちゃんは45歳の若さで胃ガンのためこの世を去りました。私は19歳の山狂いの真っ只中、お母ちゃんには心配の掛け通しでした。当時は今と違い、医療技術も治療方法も十分とは云えない時代でした。胃の不調を訴え検査を受けた結果は余命一年という厳しい宣告だったのです。急ぎ、胃の全摘出手術が行なわれましたが、その手術途中で私はナースに呼ばれました。

「君の血液型は?検査するね」

「はい、A型です」

A型輸血液が不足したようで、緊急措置として身内から採血することになったのです。同じ血液型の姉も居たのですが、屈強な私一人から大量に採ると決まりました。丸椅子に座り両腕を机の上へ置き、その姿勢のまま恐ろしく太い注射器で抜くのです。右腕から出なくなれば左腕へ、また右腕へと何度も繰り返し針を刺しました。どれだけの量を採血したか覚えていません。やがて頭から血の気が引いて床に崩れ落ちました。覚えているのは病院からの帰りに叔母が分厚いステーキをご馳走してくれたことです。

お母ちゃんは網元漁師の娘で肝っ玉母ちゃんでしたが、親父は大酒飲みで借金だらけ、飲み打つ買うの三拍子、よく夫婦喧嘩をしていました。そんな駄目親父だったのにお母ちゃんが逝くまで、何と、まるで人が変わったように面倒を見続けたのです。弱音は一切吐かず泣き言も言わず、自らの運命を気丈に受け入れてガンと闘ったあの強いお母ちゃんも親父にだけは甘えていました。

「お父ちゃん、メロンが食べたい」

「はい、はい」

あの一年間は子供達も立ち入れない、短くも凝縮された夫婦だけの暖かく静かな時間が流れていたのだなと思われるのです。

これが女房を泣かした親父、泣かされたお母ちゃん、夫婦とは不可思議なる関係です。

遊び人の親父を憎んでいた私だったのですが、その時から親父を見る目が変わりました。

この歳になって考えてみれば私も親父と同じような道を歩いてきてると思っています。血は争えんものですね。

お母ちゃんが逝って長い年月が経ちました。しかし今もお母ちゃんは私たちをしっかりと見守ってくれています。

あれはお母ちゃんの一周忌が近づいた頃だった、厳冬期の岩壁を友人と登攀していた時です、天候が悪化して雪が激しく舞っていました。友人も私も引き返す気持ちは毛頭なく、ひたすら登り続けました。途中でビバークした夜の事です。狭い岩棚で友人は悪夢にうなされ、私もウトウトと夢を見ました。病の床に伏しているお母ちゃんの足を思いっきり踏ん付けたのです。

「痛いな! あんた、エエ加減にしーよ!」

一喝されて目が覚めました。友人とお互いの夢見が悪いとの理由を付けて撤退を決めましたが、あの時、そのまま前進していたら悲惨な結果が待っていたと分ったのは帰神してからのことでした。

或る日の事、自立して一人暮らしをしている長男が突然の帰宅です。戻るや、何も言わず、真っ先に仏壇に向かい、線香をあげて神妙な顔で手を合わせたそうです。何があったのかと不思議に思って女房が聞いたところ、長男曰く、東名高速道路をスポーツカーで飛ばしていた時、フッと睡魔に襲われ意識が遠退いた、すると、

「あんた!目を覚ましなさい!あんたが死んだら、私の息子が悲しむがな!」

白髪混じりのおばさんに起こされて、ハッと気が付けば中央分離帯が目前に迫っていたそうです。

お母ちゃんは私や長男までも見守ってくれています。 

「お母ちゃん、ありがとう!」

2007年、パキスタン北部バルトロ氷河へ1ヶ月以上に亘り遠征する機会に恵まれました。山男でもあった親父の分骨とお母ちゃんの写真を持って登りました。そして標高5000Mあたり、カラコルムの8000M級の峰々を望む氷河丘(モレーン)にケルンを積みました。墓標には「父母、我と共に旅し、ここに眠る」と石板に記しました。パキスタン人の友人のムハマード・フィダが唱えてくれるコーランが山々に響き、辺りは荘厳な雰囲気に包まれていきました。両親は仲良く絶景の広がる世界で眠りに付いています。こんな寒い空気の希薄な所はありがた迷惑だと怒っているかも知れません。

佐藤さんを含め、私たち山に挑み続けたクライマーは壮絶な人の生死を何度も目にしてきました。人間の力なんて大自然の前では脆弱な存在でしかないと痛感させられるのです。

その最たる弱い私は周りに支えられて生きています。大好きだったお母ちゃんの魂に守られて生かしてもらったように、次はお祖父ちゃんとなった私が子供たち、孫たちを見守ってやりましょう。

日本がん楽会の皆さんにお会いして勇気とパワーを頂き、生きるとは、人を愛するとはを考える良い機会になりました。あれこれ思いながら何十年と連れ添った老妻の姿をしげしげと眺めていましたら、怪訝そうな目で睨まれました。

お母ちゃん最後の言葉「信男、早よ、お風呂に入りよ」

風呂嫌いの私に今は女房が言っています。

Img山好きな親父が愛用して履いていたスカルパの登山靴を絵画にしてみました。

 

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