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2013年10月 1日 (火)

3人で200歳は超えてる!(お爺ちゃんクライマー軍団が挑む前穂高岳北尾根)

昔々のお話です。元気溌溂たる若者達が瞳を輝かせ、藍く澄んだ空と眩いばかりに輝く雪との接線を攀じっていました。ひたすら高みを目指して・・・・

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あれから気の遠くなる程の時間が流れた。
「俺達も若かったなぁ、もう一度、あの北尾根を登ってみよか」

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9月24日早朝、トっちゃん、ナオヒデ君、そして私の3人が上高地に入った。

シルバーウィークの終わった翌日です。

休日には賑わう梓川沿いの銀座通りも行き交う登山者の姿は少なかった。

「見て、見て、あそこの山ガール可愛いでぇ」

「このエロ爺ィ!お主、まだ枯れてないのか!」

トっちゃん、ナオヒデ君は昭和20年生まれ、私は昭和21年生まれと団塊の世代です。

「3人の年齢を足したら200歳を超えてますなぁ」

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今山行の計画とは、第1日目に上高地から北尾根5・6コルまで上がり、第2日目には前穂高岳を越え重太郎新道を一気に上高地へと下るのだと云う。

全ての装備を背負っての行動となるのだから、その軽量化が大きな課題となる。

テント、生活装備、登攀具、食料、水を含めると、やはりザックは10キロを軽くオーバーする重量となった。

「これを背負ってクライミングするんかいな、キツイのう!」

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それでも3人は快調なペースで飛ばし、楽々と涸沢に到着した。

5・6コルまで上がる十分な時間は有る。駄目元で聞いてみた。

「なぁ、今日は5・6コルまで行くの止めて涸沢で寝ようや、頼むからビールを飲ませて!」

優しい?2人は渋々ながら承諾してくれたのです。

「よっしゃ、言うこと聞いたる。その変わり、明日の朝は早いぞ!」

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閑散とした涸沢テント場に真新しい3人用軽量テントを設営した。

「静かやのう、貸切りやないか!」

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雪の消えた北尾根下部を知らない我々は明日に備え、ガレ場を辿り、ルートの偵察に出掛けた。振り向けばザイテン方向の斜面は紅を差して紅葉の時期を迎えているようだ。

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「10月の連休は三段染めを見に来る登山者で涸沢は賑わうやろな」

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ナナカマドの実も真っ赤に色付きました。

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爆睡してしまい、04:00に出発するつもりが05:30になってしまった。この遅れが最後まで尾を引いた。

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遅れを取り戻すべくハイピッチで5・6コルを目指して登って行く。

やがて6峰の影が涸沢圏谷に長く伸びて朝日が昇った。

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奥穂高岳がモルゲンロートに輝きだした。登行の足を止めて眺めています。

「朝焼けは昔から天気が崩れると云うね、晴天域は去ったようやなぁ」

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5・6コルに出た。丁度、奥又白から男女2人のパーティーが上がって来た。京都から来たと云う彼らは涸沢へ下り、北穂東稜を登るのだと話した。

聞けば神戸の出身でそれも私と同じ垂水区の隣り町だと云う、奇遇やねと大笑いし、お互いの健闘を祈って別れた。

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5峰は駆け登るように越えた。奥穂を越えて飛騨側から雲が激しく流れ込んでくる。間もなく視界も無くなるだろう。

午前中の勝負だと気が急くのか、自然と足早になる。

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遙か足下に梓川と横尾の小屋が見えています。

何とか今日一日だけ天気が崩れないようお願いします。

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4峰手前で完全にガスに包まれた。上部は元より、時折り数メートル先の視界が無くなる。

 涸沢側か奥又白側かルートを探りながら慎重に進む。少しでもルートを外すと浮石、ガレ、ザレのトラップが待っている。

 5・6コルで会ったパーティーから4峰正面の上部の状態が悪くなったと聞いたので奥又白側も見ておこうと回り込んだ。

「なんじゃ、ここはボロボロ、ガラガラやないか!」

北尾根で一番緊張したのは4峰の奥又白側だった。

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3・4コルに着いた。当初の想定到着タイムを取り戻している。この辺りからガスが濃くなって進むルートが見えなくなってきました。

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核心部の3峰にやって来た。ザイルを付けてトっちゃんリードで登攀開始。

 視界が悪く、手探りのような登攀が続く。

 「ここに残置が有った!ルートはこっちやわ」

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ガスに霞む3・4コルから奥又白側を覗いてみる。来年の夏は、きっと、この下に喰らい付いて居るだろう。

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クライミングシューズに履き替えて快調に登ってくるナオヒデ君。

 「油断したらあかんぞ!浮石が多いで!」

登攀中は合言葉のように口を突いて出る。

 「重いなぁ!重いやろ」

競馬のハンデ戦のように、最大の敵はザックの荷重でした。

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 ビレイ点はハーケン陣でガッチリと固められております。

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ルートが屈曲するし、先が見えないのでザイルピッチは短く切って登りました。

吹き付ける風は冷たく、レインウェアーを着ています。

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ホイッスルの合図でザイル固定を確認したミッテルの私は時間短縮を考えてぺツル・ベーシックを使って登って行きます。

快適なクライミングが続くので、時々、ベーシックで登ってる事を忘れ、微妙な体勢で慌てて送り上げます。

「Kちゃん、そんなに息急き切って登らんでも、ユックリと楽しまんかいな」

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「3峰チムニーやな、記憶にあるわ!」

 掛け声かけて越えて行きます。

 「ヨイショ、ヨイショ!」

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それにしてもガスが切れない、もう3峰のピークは近いはずだ。

今日の北尾根には我々だけが取り付いている。

眼前に対峙している2峰から前穂高岳山頂など、全く見えない。

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この2峰の懸垂下降を終えれば、登攀は終了となる。

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懸垂下降を終えてザイルを解き、少し登ると、ガスの中にボンヤリと前穂高岳の山頂部が広がっていた。

何十年振りかに登った北尾根。そこには思った程の感動や懐かしさは無かった。ただ乳白色の空間を見つめ風の音を聴きながら至福の一服。

「登った後の一服はやっぱり美味いのう!」

紫煙を燻らせて笑い合った。

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前穂高岳(3090.23m)山頂

想定していた到着時間を大きくオーバーしている。

上高地の最終バスに間に合うか微妙な時間帯だ。

「すまん、俺が涸沢でビールを飲もうと言ったのが悪かった」

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下山ルートは重太郎新道を岳沢に下ります。

岩が不安定な北尾根から一般登山道に入り気分は完全に登山終了モードになってしまった。

「まだ登山は終わってないで、気を抜かんと慎重に行こうや、かなり急な下りや!」

重太郎新道は下山途中での事故が多いと聞いた。

また、この時間帯は職場でもそうですが、ヒヤリハットや事故の発生率が高いのです。

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一瞬ですが雲の流れが途切れた。吊り尾根、奥穂高岳、ロバの耳、ジャンと峻嶮な稜線が現れた。

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左に顔を振れば明神岳もスッキリと姿を見せています。

 「帰る頃になってやっと視界が開けたなぁ」

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「重太郎ってこんなに厳しい道やったかな?」

「ようこんな場所に新道を拓きよったもんやで!」

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誰も居ない岳沢のテン場です。上高地まで駆け下るのは止めた。

下ってもゲート閉鎖のギリギリ時間だろう。

「予備日があるから無理せんと岳沢泊まりにしてノンビリと帰ろうや!」

君達と違って俺なんか、どうせ帰っても苔生した信楽の狸みたいな古女房に言われるだろう。

「なんや、もう帰って来たんかいな!お早いお帰りやこと!」

山に居る方がズーッと気が楽だ。

扇沢から引くホースも撤去されていた。岳沢小屋まで行ってみたが小屋の前にある上水道もバルブが閉まっていた。仕方なく溜まり水を汲んで今夜の食事に使った。

夜中に背中から肩にかけてビッショリと濡れて目が覚めた。なんと、ポリタンのキャップが外れてタップリの水が流れ出していた。

「なんで俺だけがビショ濡れになるんや!」

毎回のように山に入れば雨に打たれ濡れてばかり、今度こそ大丈夫だと思ったのに。

「俺、水難の相が出てるんかなぁ?」

 

 

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コメント

いいですね~北尾根!!私も行ってみたいですね。

しかし御三人共お元気ですね~。頭が下がります…。

何度トライしてもメッセージが送れないのがくやしー!

あ!送れてる!
あの、私、この日、56のコルでお会いした垂水出身の原田です。
みなさんはあれから楽しく無事に帰られたようで良かったです。
こちらはあの数時間、私のパートナーがケガしちゃいまして、心の中でみなさんに今度は本気で助けを求めましたよ〜(T ^ T)
また皆さんにお会いできるきがしてなりません(^∇^)

原田さん、ビックリしました!
あれから事故ったんですか!
文面からは解りませんが、彼は大丈夫なんですか?
プロフィールに私のメールアドレスも掲載してますから、
六甲近辺に来られる時があれば連絡下されば一緒に遊びましょう。
元気な爺さん達が待ってますよ。

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